エッフェル塔を目指して、パリ郊外の森を駆け抜ける。EcoTrail 80km

すましんさんからトレイルランニングの大会レポートが届きました。このEco Trailは、パリ近郊の森を抜けて、エッフェル塔を目指し走る80kmのレースです。距離は80kmと長いですが、累積標高差は1500m、完走率も78%、ゴールがエッフェル塔という華やかさもあり、ウルトラトレイル入門にはもってこいの大会です。

マイペースを貫く慎重なレース運び

EcoTrailを終えて、5日が過ぎた。忘れないうちに、レースレポートを書いてみよう。

 今回のコースの距離は80km。今はそこまで違和感がないが、昔なら考えられない距離だ。一年前、友人がEco Trailに参加した話を聞いた。時を同じくして、体調管理目的にランニングを始めた頃であった。距離を聞いて、80km!? と目を丸くして驚いたのを今でも覚えている。実は日本にいた頃に50kmまでのトレイルレースに参加したことがあるが、フルマラソンの倍の距離は到底及ばないと思っていた。


スタートゲートにランナーが集まる

 そして、3月18日、Eco Trail80kmのスタート地点に立っている。生憎の曇り空ではあるが、寒さはさほどではなく、走りやすい気温であった。僕は2ème vague、第一ウェーブから5分後のスタート。ブザーがなり、一斉に皆スタートした。フランスに来てから2回トレイルレースに参加したが、スタートから皆すごい勢いで走り出す。今回も同様、皆すごい速さだ。自分はマイペースで行こうとレース前に決めていたが、アドレナリンが出ているせいか、どうしてもスピードが勝手に出てしまう。気がつくと、心拍数は140を超え、心臓がややバクバクしているのがわかる。最初の20kmは平坦なイメージであったが、実際は微妙な上り坂が続いている印象であった。その影響か、いつものペースで走っていても心拍数はいつも以上で推移し、呼吸や足は全然問題なかったが、相変わらず心臓のみがバクバクしていた。15km地点あたりで、後からスタートした友人に抜かされる。僕のために写真を撮ってくれ、その後颯爽と走り抜け、あっという間に見えなくなった。

レース序盤、Saint-Quentin-en-Yvelinesのゴルフ場横を通過する

 最初のエイドである23km地点のBucに到着。心拍数はすでに160を越えていた。おそらく、オーバーペース。少し落ち着かせようと、カフェインを摂取する意味でコーラを飲んだ。久しぶりのコーラ。めちゃくちゃ美味しかった。

Bucのエイドに到着

 エイドに着いたあたりで、小雨が降ってきた。ウィンドジャケットを羽織り、再び走り出す。相変わらず、心拍数は高いが、心地よいペースで走っていく。その中、60過ぎと思われるお婆ちゃんも走っていた。元気にしゃべりながら、走っている。すごい! 

BucからBièvreの谷を抜けてMeudonの森へ。パリ郊外には緑が多い

 30−50kmは急な坂も増えてきた。流石に急な坂は歩く。ここにきて、かなり体が重くなっていた。最初の20kmのオーバーペースが効いたのか、心拍数も高くて、なぜ今、僕は走っているのかと自問することもあった。僕は性格上、人に流されやすい。皆のペースに合わせて、スタートしてしまったことを後悔しつつ、ペースを落として、淡々と走る。周りにかなり抜かされていったが、ここは敢えて追わずにマイペースを貫いた。


Meudonの高台から

 46km地点Meudon。再びエイド。小雨も降ったり、止んだり。エイドで止まると少し寒さを感じる。このエイドは水分のみの補給。しっかり水を1L。次のエイドは10km先だよと教えてもらい、元気をもらって、再び走り出す。少しペースを落としたこともあり、心拍数は130台で落ち着いてきた。先程のエイドから2kmくらいで、プチエイド。マドレーヌを配っていた。ちょうどジェルを摂取した後で、少し迷うも、マドレーヌを見たら、思わず手が出てしまった。大の甘党。甘いものには目がない。マドレーヌを頬張りながら、階段を登っていく。すると、眼下にパリ市内を見渡せる高台に到着した。エッフェル塔が見える! そこがゴールだとわかると、少し元気が出る。その後は比較的平坦な道が続いていく。歩くことなく、走り続けられている。調子は悪くない。

Meudonの森の西に位置するChaville。ここからナイトランへ

序盤のペースのキープから、後半の追い上げへ

 そのまま、57km、Chavilleのエイドに到着。気がつけば、もう18時。太陽は沈みかけ、あたりは暗くなり、ライトが道を示していた。エイドでは温かいスープを飲んで、体を冷やさないようにした。このエイドでは抜かされた友人と出会った。このエイドで少し長く休んでいたようで、追いついたようだ。友人が去ってから、離されまいと先を急いだ。というか、身体が冷えてきていて、止まっているのが辛いというのもあった。ここからはヘッドライトも付けた。暗い森の中を複数のライトが光る道を作っていた。


 日が暮れた森の中、ヘッドライトでトレイルを照らす

 この辺りからは、今まで抜かされていたランナーを再度追い抜いていくことが多くなった。自分としてはペースを上げているわけではないが、周りのランナーがペースを落としてきたのであろう。かなりスタミナがついてきていることを自覚し、追い抜く楽しさを味わいながら、走っていく。

Parc de Saint-Cloudから。ゴールまで、あと少し

 最後のエイドである70km地点Saint-Cloud。このエイドでは、椅子に座って、疲労困憊のランナーを数多く目にした。ここではカフェイン摂取を目的にコーラだけ飲んだ。やはり疲れた身体にコーラの味は格別である。少しでも早くゴールしたい。ただその想いだけで、再び足を進めた。走り出して、まもなく、友人にも追いつき、下りで追い抜いた。最後の8kmは平坦コース。ゴールであるエッフェル塔も見えて、元気がでるが、下り終えてからの平坦コースは足にくる。ペースが落ちたところで、再び友人に追い抜かれる。あっという間に200mほど置いていかれたが、残り5kmくらいで再び追いつく。会話をしながら、走っていると楽しいし、とても元気がでた。一緒にゴールしようと言ったものの、気づいた時には後ろに見えないくらい先を走っていた。そのまま、エッフェル塔まで駆け抜けていく。

華やかなフィニッシュ。と思いきやゴールまではまだ階段が

 エッフェル塔周囲はすごい観客と声援。元気をもらい、さらにスピードが上がる。ようやくゴールであるエッフェル塔の真下まで到着。ゴールは1階。しかし、この1階がとても長い。おそらく、7、8階分ぐらいの階段を登ったのではないか。そこでも、足は動いていた。10人くらいのランナーを追い抜き、ゴール。ゴールからはパリの夜景が一望できた。やはりこの達成感がなんとも言えない。遅れて来た友人とゴールの感動を一緒に味わう。メダルをもらい、そして本当はここでビールが配られ、このビールで一杯といきたかったが、残念ながら、ビールはなし。切なさが尾を引きながら、再び長い階段を降りていく。

 家に着いて、シャワーを浴び、その日はあっという間に寝てしまった。翌日、清々しい気持ちで目覚める。5月には160km。次はどんな苦難があるのか、しかし、160kmを走り切った時のあの達成感を得るために、また練習を再開するであろう。

フランス単身赴任中。一人暮しをきっかけにランニングを再開。トレイルランニングを満喫しています。

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