モンモレンシーの森へ初めて行ったのはパリ北部に住む友達ルシルとだった。ブルターニュで育った彼女は、子どもの頃から家族でよく森へ出かけいたので、時々一緒にパリ近郊の森を歩いていた。その時は春だったが、森のほとんどが栗の木だったことに驚いた。調べてみると森の70%が栗の木なのだそう。秋になったら収穫に来ようと心に決めて、ようやく今年栗拾いが実現したのだ。
他のパリ近郊の森と同様にかつて貴族の狩猟のために森だったMontmorencyへは、パリ北駅からH線に乗って約30分。距離にして約20kmしか離れていない。他の森と比べても近いといえるだろう。私が気に入っているのは、Taverny駅で降りて、時計回りにぐるっと森を周り、帰りはSaint-Lou-la-Forêtから再びパリへ戻るルート。10kmくらいのコースを栗やキノコを探しながら歩くのだ。
10月初旬に行った時には、森へ入った瞬間からもう栗が落ちている。それもトレイルにいっぱいだ。初めはそれだけでも大喜びしていたが、やはり簡単に見つかる栗は概して小さい。栗は処理に大変手間と時間がかかるので、同じ工程なら粒の大きな栗に費やしたい。バッグに詰め込みたい気持ちをぐっとこらえて、トレイルから藪の中へ入る。木の根元にも気を配り、キノコのチェックも忘れない。
大きな栗の実を探して森の深部へ
シーズンになると、栗拾いやキノコ狩りを目当てに多くの人が訪れる。駅に近い南側には、大きな袋と手袋を要して、茂みで栗を拾うガチ勢も。中国人のように見えたが、飲食店にでも卸すのだろうか。若いマグレブ系のグループもキノコを探していた。
アクセスしやすい場所は競合も多いのは必然だ。私は森の中北部まで歩き、入りやすそうな場所からトレイルを外れて森へ分け入る。低木もあるが、ほとんどが生育途中の栗の木で思いのほか歩きやすい。むしろ適度なアップダウンやくぼんだ谷のような地形もあり、面白い。同業者が歩いたであろう踏み跡もあり、道に迷うという怖さもほとんど感じない。そして、やはり思ったとおり。森の中の栗はほとんど手付かず。取り放題だ。しばらく、吟味していると、木によって実の大きさが異なることに気づく。大きな実を作る木を見つけた時は、夢中になってしまい、あっという間にバッグはいっぱいになってしまった。
キノコも人どおりの少ない斜面で多く見つけた。真っ赤な傘が森の中でも目立つ、ベニテングダケ、袋状で踏むと胞子を撒き散らすホコリタケ、セップに似たイグチ科のニガイグチやニセイロガワリなども多く見つかる。可食、不可食に限らず、森の中で見つかるキノコのフォルムはなんとも愛らしい。特にイグチ科は、ザ・キノコといった王道のフォルム。それがセップ茸だった時は宝物を見つけたように嬉しくなる。
普通に歩けば3時間くらいのルートだが、気づけば日が沈みかけていた。栗拾いやキノコ探しには、日頃の煩わしさを忘れて森の中で没入できる楽しさがある。バッグの心地よい重量感に足取り軽く、パリの自宅へ向かう電車に乗り込んだ。
-後日談-
今シーズン収穫した栗は約5kg。糖度を上げるために冷蔵庫で二週間ほど追熟させた後、半日かけて皮を剥いて栗ご飯や甘露煮に。市販のものよりも小粒だが、手間暇かけて支度をする時間も含めて栗拾いを楽しめた。
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